家づくり記録 Tさん

NO.4

 

ここから夫に戻ります。
   
 久米さんとの契約も終え、そのあとは打ち合わせを繰り返す日々。 キッチンも当初は久米さんに「どれにするか同行しますよ」と仰っていただきましたが、決定まで時間がかかりそうなことと、子供が小さく小回り利かないということもあり、家内とともに各メーカのショールーム巡りを進めました。  デザイン的にはTOYOがよかったのですが家内の身長が届かない・・・ということもあって断念。
 あるとき「ちょうどタイミング良く、輸入キッチンを激安で購入できそう」と久米さんに紹介いただき、車で実物を見に同行頂いた事もありました。ですがどうも我が家においてはデザイン性よりも「静音シンク」「水無し両面グリル」「食洗機」の3点セットが必須で、これ以外は「あればいいなー」レベル。あとは特に大きなこだわりもなく、結局は価格優先になる、ということも見えてきました。
 紹介いただいたキッチンはとても大きく使いやすそうで、しかもかなり激安でウチの間取り的にも収まりが良く、久米さんにもおススメいただいたのですが、少し予算が足りなかった。残念。
 何事もそうですが、当初「これは譲れない」というものも、よくよく煮詰めると実はそうでもなく、また「これは別にいいか」というものも、よくよく考えると「やっぱり必須だわ」ということも見えてきたり。自分の家のことは自分が一番考えてる、と思っていましたが、なかなかどうして、見落としてる部分が実に多い。
 おかげで打ち合わせするたびに家の設備や間取りも追加や削減が頻繁に繰り返され、久米さんには本当にお手数をおかけしました。 メールでのやり取りもあったので、意思疎通がうまくいかなかった時もままあり、反省することしきり・・・。 ですが、おかげで納得できるものになってきました。

 キッチンに始まり、風呂も当初は久米さんに提案頂いたのですが費用を抑える為にユニットバスに。次にどれにするか色々調べたのですが、結果「ユニットバスならもうなんでもいいわ」となり、洗面・トイレも「もう何でもいいわ」と。
 少々投げやりのようですが、色々と調べた結果どれも大差ないんじゃないか、そこにカネをかけるよりは他のところに手を入れたい、ということも見えてきて、結局TOTO製の安価なモデルで統一。キッチンもクリナップ製の安価なものに。
 こういうところで「金かけてるな」とか「使いやすさ・センス」が出るんでしょうが、そういう配分がヘタクソな私たちです。

  
 さて、キッチンなど住宅設備も概ね固まり、いよいよ仮住まい先の選定に入ります。
 子供の事もあり近隣に住むことが必須だったのですが、うまい具合にお隣さんの祖母がお住まいの賃貸マンションに空きがある事がわかり、そこに滑り込めました。
 そのマンションは自宅から歩いて30m。その部屋の窓からは自宅が見えます。 なんてグッドな場所。 速効で契約。 予算のこともあったので保証金も金額交渉し節約。 引っ越しも相見積してとにかく節約。

 引っ越しを終えたのがG/W前の4月末でした。 引っ越しして判りましたが、我が家には要らないものが実に多い。。。 引っ越し後は一部屋まるごと「倉庫」になりましたが、仮住まいが終わったら、このモノたちはどうなることか・・・。 またそのときに考えることにします。
    
 ともかく新居で生活再開。 結構快適で「もう家建てんと、このまま住み続ける?」と夫婦で冗談言い合うほど。 いよいよ建て替えイベントも目に見える形になってきました。


久米から一言…

 

予算を抑えるにはとにかく、本当に大切なこと以外は割り切って進めることが大切… 

そういう意味では、Tさんはご判断が潔く、うまく進められたと思います。

むしろ、私のほうが説明が不足してご迷惑をおかけしたことと思います。

 

いつも、できるだけ説明には気をつけているつもりではいるのですが、設計の方針を決めた理由を技術的なことも含めて、細かくご理解いただけるように説明することはなかなか難しいことで、私たち設計事務所はいつも、そのことに慎重にならねばならないと思っています。

 Tさんは「細かいことは久米さんに任せるので」とおっしゃってくださった故に、ここまでやってこれたと、感謝しております。

私たちの設計業務は、実務的な図面作成だけではなく、建築のトータルのコーディネイト。

細部まで、どこをどうすると、どのように建物に技術的に影響するか、デザインの内観、外観のバランスはどうか、を、検討し続けねばなりません。

だからこそ、決め細やかな意志疎通が、双方にとって大切なのです。

 

 

振り返って考えると、感性が似ていることや、お話の相性が良さそうなことは大切なことで、

これまでの施主さん方も、私の仕事をご覧になって、何かを感じてくださってご依頼いただいた方々ばかり…

そういうベースがあるところからスタートすると、エネルギーをたくさん費やす家つくりも、楽しいひとときとなって、幸せなお家が完成するようです。

 

また、私はとっても「しつこく」建築を検討し続けるたちで、寝ても醒めてもずっとよりよくすることを考えてしまうため、ご依頼によりプランを何度か変更されたとしても、結局、常に最後の案が一番良い、ということになっているように、自分では感じています。


条件が厳しくなるほど、よりよく鍛えられた建築になります。

工務店の現場の人にとっては、工事中も考え続ける私は、面倒なやつだと思われているかもしれませんが。 もちろん、私の好きなルイス・バラガンのように、途中で壁を撤去し作り直す、なんて無茶な変更はいたしません。(笑)


 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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