家づくり記録 Tさん

NO.3

 

 衝動買いが嫌いで、何であれ、より良いものを求めてじっくりとリサーチしてから購入する夫に対し、妻の私は現状安住型。
いいじゃん使えれば。これまだ使えるよ。いいよこれで。まぁ夫には”ケチケチ大魔王”と呼ばれますが。
    
          “ケチ”じゃないのよ、“エコ”なのよ。
   
   
 その私をしても、この家は寒すぎる。 子供を入浴させる為に裸で走り回り、何度ひかなくても良い風邪をひいたことか。 子供も冬中ハナたらしていたような...。
 部屋も小分けになりすぎていて、キッチンに居るとリビンクの子供の様子が全くわからない。食事を運ぼうにも、リビングは廊下を隔てた向こう。なんせ動線が繋がっていない。夏暑く、冬寒い。更に傷みがひどくなってきたので、結構切実に身の危険を感じてきました。

 初めて久米さんとお会いし、(私は初めてではなかったのですが) 私が大きく主張したのはこれくらいかなぁ。
 あ、後は私、布団を干した日のお日様も匂いが好きなんです。それから家族が皆好きな、糠漬けの為に床下収納が欲しい。

 一方、夫は6年半分の考えをぶつける、ぶつける。その日久米さんが書きとめた紙を見ると、よくもまぁこんな予算でと、今なら思えます...。
 しかし、夫の思いはすごかった。 仕事と家事と育児に追われていた私には想像もつかない程の具体的な希望で、実は初めて聞く思いが多くて驚きました。そんなことを考えていたのね。
      
 その後打合せが進むにつれ、4歳児を叱りつけ、新生児を寝かしつける私を尻目に殆ど久米さんと夫とで進んでいく...。
 実は、毎回ちょっとした疎外感さえ覚えながら打合せを終えていました。 打合せの成り行きにも、ただドキドキするばかり。
 でも毎晩帰りの遅い夫を、起きて待ってもいられない私は家でもなかなか話が出来ないもんなぁ。 夫から久米さんに宛てたメールの“CC”でこれまた初めて知る決定事項。お父さんが考えに考えたことだからきっと間違いない...。
    
    
 そんな中で楽しく思えるのは、久米さんの事務所に飾ってある置物などが私も好きであること。そして私が大事にしている置物などの写真を見て頂いた時に、“すごい素敵”と言ってもらえること。
 久米さんの考える家の中のちょっとしたデザインが、私としてもとてもワクワクすること。
 ワクワクすることが同じというだけで、全部お任せしても良い気になってしまいます。

     
 設計も徐々に進み(息子は“おうちの先生”と久米さんに大変なつきました)、鈍い私にもようやく少しずつ実感がわいてきました。

 

久米から一言… 

もともと、T様にはご自身で大変に時間をかけて考えられた、お家のプランがありました。

初め、その平面図と立面図(すごいですね、ソフトがあるとはいえ、ここまで描かれるとは…)を見せてもらいました。

しかし、本当にT様には申し訳なかったのですが、私の事務所でお引き受けし、設計に責任を持つ以上、私が検討し、ご提案したプランをご覧いただきながら設計を進めたかったので、そのやり方でご理解いただけるかどうかをまずお訊ねし、そうして、ご快諾をいただいたという経緯があります。

 

今回の家づくり記録を拝見して、どれほどのお気持ちだったかと…、改めて、私にお任せいただいたことを有難く思います。

 

それにしても、家づくりは、家族それぞれの思いや暮らし方を改めて見つめなおすとても良い機会。奥様も書かれていますが、この設計の打合せのときに、初めてお互いの考えを知った…というご夫婦はとても多いものです。それまで知らなかった一面を、お互いに垣間見られることもあるようです…!(笑)

 

奥様、あまりご意見を伺わず、申し訳ありませんでした。今からでもじゃんじゃんおっしゃってください。

 

尚、4歳の息子さん、「け」くんは(いまどきびっくりの)物凄く良い子! 

お世辞抜きに、本当に子供らしい素直な、気持ちの綺麗なお子さんで、いつもお行儀良く、打合せにご参加です。(大体…) とても愛想が良くて、私も会うのが楽しみです。

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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