家づくり記録 Tさん

NO.1

 

 衝動買いは嫌いです。

 電化製品ひとつをとっても、世の中には様々なメーカや機種があり、衝動買いした後、他のよりよい製品を見つけると後悔の念にかられます。

 同じように、私の買い物で最も大きいものが「家」。そもそも家を「買う」という概念は、私の価値観の中には存在しません。実家が建築関連の仕事に携わっている事もあり、家は買うものでは無く、建てるものだという固定観念が今もあります。ガキの頃からオヤジに「建売は買うなよ」と口酸っぱく言われていたことも大きな要因です。親の影響はいろいろ受けるものです。注意せねば。

 結婚してしばらく親兄弟と同居の後、新居を探すにあたり、家内と二人紆余曲折の末中古の家を買うことになりました。インターネットで条件を絞り込み、週末になっては夫婦でいそいそと不動産屋に出かける日々。何ヶ月続いたでしょうか、予算的には上限を超えてはいましたが、場所・敷地の広さ・周辺住環境で概ね妥協できる物件が見つかりました。決して"ベストチョイス"では無いものの、初めて(不動産屋に"この人達は本当に家を買ってくれるのか?"と思われていた矢先)家内と意見が一致した物件です。
 狭いし古いし元は建売だし、決してお買い得では無い、むしろ"かなり割高"なことはわかっていた物件でしたが。
   
 さて、引越し後は子宝にも恵まれ、殺風景だった家の中にもだんだんとモノが溢れ、えらいことになってきます。また古い家だったので冬は寒いし夏は暑い。建売中古ですから家の造りもよろしくない。さすがに家内も泣きが入ります。

 「冬のお風呂がつらいのよ。」

 「モノ置くところが無いのよ。」と。

 いよいよ建て替えを具体化していく時期が来たのかな、とおぼろげながら思うようになりました。

 建て替える際には間取りを考えます。中古の家を買ったときから新しい家の間取りを考えていました(思えば、我が家の"家づくり物語"はこの時から始まっていたのです)。これは私の趣味にもなりました。
   
 施工をどうするかも問題です。ハウスメーカー、工務店、設計事務所。そもそも家を建てるのには予算があります。施工に関わる人が増えれば増えるほどカネがかかるのは当然。安いのはどこかに理由がある。この頃は"偽装"が世間で注目されてた時期でした。
   
 家を購入した際には5年後完済を目標にしていた住宅ローンは、繰り上げ返済を年に1回、多ければ2回のピッチで繰り返しました。出産、育児休暇等で少し返済ピッチが落ちた時期もありましたが、6年後、二人目出産にあたり遂に専業主婦に収まろうと腹を括った家内の退職金を充てれば完済、建て替えの頭金もわずかながら準備できる、というところまで来ました。それが2007年秋。この頃から本格的に建て替えプロジェクトが発足しました。

 

久米から一言… 

 

毎回そうですが、建築主さんのこの記録を読ませてもらうのは、本当に楽しいものです。

私の知らなかったことも多く語られますし、「そうだったのか…」と。

同時に、改めて気持ちが引き締まる感じに。

 

私には分からないところでの、建築主さんたちの家に対するお気持ちを見せてもらえて、

「頑張らなくては」と改めて思います。

 

さて、これから一体どうなるでしょう…? (実は今、ご予算に合うように一所懸命設計中!)

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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