Kさんの家作り記録

NO.9

 

 工事中、どんな問題があったかと言えば、いろいろあったのでさあどれから言おうかと迷うぐらいです。他人の不幸は蜜の味なんてなかなか鋭い言葉がありますが、工事がスタートしてからのあれこれは、これが他人事なら相当面白かったろうと思います。これを書いている今、新居に満足して住んでいるからこそ、こんなことも言えるのでしょうが。


 キッチンの件がなんとか落ち着いてやれやれと胸をなでおろした頃に起こった大問題は外壁のALC板のことでした。我家は北玄関で、南に隣家が迫っているため北側に大きく開口部を取り、2階、3階のバルコニーがドンと出ています。このバルコニーの鉄骨と、外壁ALC取り合いの納まりの個所でK建設がミスを犯し、その修正をめぐって揉めました。バルコニーをできるだけ軽快にとデザインした久米さんは、最初K建設が提案した補修案ではデザインが台無しになるし雨対策も納得がいかないと反対し、それでなくても工期は遅れているしどうしよう、とまた胃が痛くなる日が続きました。が、優れもののALC専用補修剤があることが判明し、これを使えば久米さんも納得がいくということで、既に貼り付けたALC板をはがす必要がなくなりました。この時、デザインにとてもこだわる久米さんの姿勢に私は頼もしい感じがしました。


 同じ頃、3階の床用にと見積もっていた、安い杉の集成材が販売中止、在庫もないと判明し、代替品をどうするかという問題が持ち上がり、これも大変でした。とてもお買い得という感じで選んでいた床材だったので、代替品はどうしてもかなりのコストアップになってしまうということになり、どうしてもっと早くから材料を仕入れておかなかったの!?という施主の主張。契約書通りにいくと同じ値段で同等のものを提供するのが当然だけれど、材料の突然販売中止の憂き目に遭ったK建設も被害者、という久米さんの意見、これが対立して少し揉めました。ま、これは久米さんの意見の方がフェアでしたね。


 また、楽しく頭を悩ましたこともいろいろとありました。外壁の色の決定、壁紙の選択、鉄骨が部屋の中に表しになっているので何色に塗ろうか、白が基調のお風呂場の壁に色タイルをポイント的にちょっと散らすにはどこにしよう、と色鉛筆片手にお絵かきもしました。カーテンをどうするか、2階の天井は軒下の色とあわせてペイントで塗ろうか、3階までTV配線をするか、表札はどうするか等々。楽しかったのではありますが、いづれにしても物事を決めるということは疲れるものです。振り返るとあの頃もまた怒涛の日々だったとため息が出ます。


 工事がこの頃までに1ヶ月以上遅れていて、気候はどんどん涼しくなってくるし、私の仕事の都合もあるし、ということで10月初めにやっと「1024日には引越しします。それに間に合わせてね!」とK建設に宣言し、それから、最後の、最後の、怒涛の日々に突入となりました。

 

久米から一言… 

 

いつもストレートに書いてくださるK子さんの日記には、なかなかコメントが難しいです…(笑)

建物の色等は、いつも大体、全体のイメージを崩さないようにアドヴァイスさせていただきながら、建築主の方とご一緒にご相談し、お好みを選んでただくことにしています。これは楽しい作業ですね。

 

それから、杉の集成材について、もう少し。

国産の林業を守るため、以前より国産の杉の間伐材を利用して集成材が各地で生産されていました。構造的に耐力が認められているJパネルというものは見た目も綺麗でそれなりの価格もしますが、それ以外に、普通の杉の積層材(小さな材の集まりがわかるもので、よくカウンターなどに色々な樹種のものが使われています。)もありました。

これはとても安価で無垢材に近い感触が味わえるので便利だったのですが、突然なくなってしまいました。

あとで分かったことですが、そのメーカーだけ無くなったのではなく、国内全て、既製品として造られているものは無くなったのでした。どうしても、採算が合わず、それでどの山も製造を中止してしまったということでした。

 

国内の林業は今とても難しい状況にあります。かなり以前から、国産材を使って家を建てようという動きがありますが、まだまだ山のサイクル(植樹から伐採まで)がうまくまわるところまでは行かず、危機を脱していない状況です。国産材がうまく伐採されて使われていかなければ、新しく植樹もできず、山もあれてしまって、このままでは日本の木材の供給が近い将来できなくなってしまうのです。

 

今回のK子さんのお家は鉄骨造でしたが、条件が許すならば、木造の、それも国産材を使った家を建てていただきたいと願います。 日本の森を守っていきたいですね。

 

K子さんのこの1件は、結局、杉のかわりに国産桧の積層材を床に使いました。

 

その後のコメント) 最近は、工事業者さんの選択を慎重にするようになりました。ここの工務店さんが悪いというわけではありません。ただ、無駄なトラブルは避けねばならず、見積りをお願いするときに判断できるようにと思っています。

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

 (記事はこちら)

 GeekanNZ のウエブサイトはこちら

 

- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

 (記事はこちら)