Kさんの家作り記録

NO.7

 

 地鎮祭は517日に行いました。主人は別に省略しても全然かまわないという(不信心な)意見でしたが、これをしていない現場はどうも問題が多いので上棟式は省略しても地鎮祭の方はやって下さいという(験を担ぐ)K建設からの発言がありました。職人さんのことを考えると反対の方がいいのじゃないのかな?と私は思いましたが(私も不信心)、建設会社の言葉通りにしました。地鎮祭は勿論初めての経験で、おかげで、いいけじめになりました。これまで頭の中だけに存在していたものがいよいよ形をとり始めるという感激を味わい、とにもかくにもここまで家造りが漕ぎつけた、みなさまありがとうという感謝の気持ちを素直に持つことが出来ました。この折、それまで何かと連絡が悪かったK建設に対し、今後はこんなことが無いようにという釘をさすために、久米さんが私たち施主と地鎮祭に出席したK建設の社長との3者の話し合いの場をちょっと設定しました。いよいよ工事スタートと私は心中感無量でしたが、その直後にまた(?)大騒動が持ち上がりました。


 地鎮祭が過ぎればすぐにでも工事が始まると期待していた私の気持ちは見事に裏切られ、ようやく工事らしきものがスタートしたのは地鎮祭から10日以上も経ってから。そして、最初の大事な基礎工事のやり方について、久米さんとK建設との間で大きな意見の相違が出来たのです。

 私自身はこの基礎工事がスタートした直後ぐらいからずっと東京へ出張する仕事があったため現場を見ることもなく、事の次第はあとで主人から聞き、正直のところ全てをよく理解したとは言えないのですが、ようするに、このやり方ではだめだ、やり直し!と言う久米さんと、今までこれでずっとやって来て問題ない、と主張するK建設がぶつかり、私が不在中に我家で双方が一同に会し話し合うという事態になりました。事と次第によっては、前払いの400万円を返してもらい、施工会社の選択し直しということまで視野に入れなくてはいけないということで、さすがに呑気者の私も東京で身も細るような思いで、話し合いの結果を知らせる主人の電話を待ちました。相当厳しいやり取りがあったとのことでした。


 結果、K建設は久米さんが指摘するように工事をやり直し、またそれまでの連絡の悪さもこの大騒動を反省材料として改善されたようでした。この騒動の間、工事はストップしていたので、棟上げも当初の予定より1ヶ月以上遅れ(雨が降り続いたこともありましたし)7月下旬にようやく行われました。この後も、工事に行き違いやもめごとはつきものだということを素人たる私はつくづく悟る出来事は続き、そして久米さんは、信念に基づいて闘う建築士(少し大層な表現ですが)という面と慈母の如く(これも少し大層かしら)寛大に許せる範囲ではぐっと堪えて譲歩もする面をケースバイケースで巧みに使い分けている、ということがじわじわと分かる出来事は続いたのでした。

 

久米から一言… 

 

施工のやり直しを指示しただけで、こんな大袈裟なこと(施主さんを巻き込んでの話し合い)になるなどと、かつて無いことでした。

K子さんは、「行違いはつきもの」と言ってくださいますが、こんなことは決して「良くあること」ではありません…

工務店が私の指示とおりに施工をやり直すことはできない、ということで、工事を降りる、施主と話し合う、と自ら言ってきたのです。Kさんのご紹介という強みを感じていたのかもしれません。

ただ、厳密に言えば、施工を間違えたと言うより、材料を事前に何の相談も無く、設計で選択していたものと異なるもの(安価なもの)を選んで使っていた、という出来事でした。

基礎はとても大切な部分ですから、材料の違いを受け入れることはできませんでした。また、施工状態もゆるいと判断されました。

 

現場で、「こういうことを事務所に相談無く黙ってすると、『手抜き』と勘違いされることもあるのだから、今後は事前に相談してもらわないと困ります。」と、意見したことなのですが、「プライドを傷つけられた」と、凄い勢いで…(私もものの言い方がまずかったのでしょう。)

 

K子さんたちのご希望(新たに工務店を探すのが大変…などのご希望)で、結局その工務店と工事を継続することになりましたが、設計事務所に対して報告や連絡をきちんとしない工務店は、困りものです。ご本人達は問題を感じていないのかもしれませんが、いつもそのように仕事をされている工務店は、事務所ときちんと仕事をやっていくには色々と大変…、ということです。

結局、その後もいろいろあり、K子さんが書かれているように、上棟は大幅に遅れました…

 

それから… 私は慈母のごとく優しくなんてないです…(照)

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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