家づくり記録 Aさん 「安全で住み心地の良い家が欲しい」

NO.4 「土地を取得し、設計事務所を訪問しました。」

2004.07.17

 

 2003年4月、いよいよ土地探しスタート。私の住む町にも何軒かの宅地建物取引業者がありまして、その中でも免許更新回数が多く(今まで違反で免許取消し処分を受けていない)、地味で堅実そうな所に目星をつけました。早速行って社長と担当者に私の希望条件を提示し、物件照会を依頼しました。すぐに10数件の物件がFAXされてきて、それらのすべてを家内と見て回りましたが「帯に短し、タスキに長し」で気に入った物件はありませんでした。「出物に掘り出し物なし」の諺どおり売れ残りのものだったのでしょうか。担当者に聞くと少し広くて良い物件は宅建業者が売らずに自分で買って押さえてしまうのだそうです(土地を分割して建て売りにするため)。

 なかなかそう簡単には希望条件に合った土地は見つからないものだと思いました。

 しかし、その担当者は若いながら実に熱心でいろいろ物件を探してきては紹介してくれました。そういうことを繰り返す内、1ヶ月、2ヶ月と過ぎていきました。6月に入って担当者から連絡が入り、いい物件があるとのこと。「お宅の条件にぴったりです」と。早速、現地を見たところ「これはいいな」と直感。土地購入の決断は早くしなければならないのですね。何故なら、売主が別の宅建業者にも声をかけていて、他の客が手を上げたら先客優先ということになって「残念ですがあの物件はもう売れました」となってしまうのです。妥当な土地価格かどうかは公示価格との比較ではなく、周辺における最近の取引事例価格との比較だそうです。すぐに業者から売買事例データを取り寄せ、自分なりに付近の公示価格の最近の動向や周辺環境(道路幅、方位、最寄り駅までの徒歩時間など)を考慮して検討した結果、「これは買い物件だ」と判断しました。

 

 この時点である設計事務所に行き(結局この建築士さんが久米さんだったのですが)この土地に建築することで何か致命的な問題がないかどうかを相談しました。この時は未だ久米さんに設計監理をお願いすることが決まっていた訳でありませんでしたが、わざわざ周辺のボーリングデータを取り寄せたり、活断層の有無を調べてくださいました。又、私自身も市役所の下水道部に出向いてボーリングデータを入手して(コピーはどうしてもくれませんでしたので写して来ました)地盤の状況を調べた結果、比較的良好な地盤であることが判明しました。又、過去の災害の有無について人づてに付近に住む人に聞いたり、市役所で災害記録を調べた結果、「特に防災上問題無し」と判断し、本件土地購入を決定しました。

 土地概要は、面積約50坪、ほぼ正方形、角地、古家付き、第1種低層住居専用地域、第1種高度地区です。土地が決まったことで家づくり計画は具体的に推進できる態勢になりました。

 

 次は建築家(設計事務所)を選んだいきさつの話です。あまたの建築家の中の誰に頼むか、これは建築主にとって難題です。建築主の多くは、自分は本当は何をどう望んでいるのかを明確に意思表示できないジレンマを持っていると思います。ですから自分達の想いをうまく引き出して形にしてくれる人を求めているはずです。建築家、1級建築士と聞くと近寄りがたい存在と思ってしまいますが、「本当に私達のことを考えて設計してくれるのか、誠実で熱意が感じられるか」が大きな拠り所になるのではないでしょうか。直感が結構モノをいうのかも知れません。お見合いみたいなものですかね・・・。

 

 インターネットであれこれと検索していたら久米さんが出ていました。他の男性の建築家と一緒に出ていたと思います。久米さんのホームページを見て一番注目したことは、建築主を中心に設計事務所、工務店の三者の役割分担のあり方、設計事務所の業務内容とその手順、設計監理報酬などについて素人に分かりやすく丁寧に説明していることでした。特に三者による三権分立の考え方や設計・監理と施工は分離されなければならないという強い信念に私も同感の思いを強くしました。それに加えて、もともと私は住まいの設計は女性に向いていて炊事や洗濯などの家事への理解と、女性としての細やかな感性が設計へうまく反映できるのではないかと思っていました。

 

 ここは思案より行動が大事と思い、早速「建築設計工場 神戸事務所」(現在では西宮事務所に名称変更されています)へメールを入れて6月25日に私一人で伺いました。場所は甲山や北山貯水池の西側で近所には田畑、農家、墓園、病院,寺院が点在する未だ自然がたくさん残っている所です。以前から前の道を車で通行していたのですが、こんな所に鉄筋コンクリート造の設計事務所があったかなあという感じでした。久米さんは思っていたより建築家然!としていなくて、気さくで話しやすい人でした。私からは自己紹介と共に予定土地の説明をしました。

2回目の7月12日には家内と共に伺い、家族の固有情報や今回家を建てることに至ったいきさつ、当方の希望などについてお話しました。そして次回はそれらに基づく平面構想案を提示していただくことになりました。

この時点で「やっと家の設計が始まるんだなあ」と、一山越えた安堵感とこれからの期待感で一杯でした。

 

久米から一言… 

 

この家造り記録を拝見していると、Aさんにお会いできて良かったなぁと、当時を思い出します。

 おそらくは、他の設計事務所でもそうだと思うのですが、私の事務所でも事務所にお越しいただいてご相談を伺うときに、土地の情報をお持ちになられた方には、その時点で土地について分かる範囲のことはお知らするようにしています。

 

(先日も、あまりにも問題が多いと感じられる土地でのご相談があり、ご納得の上か否かと思い、意見を申し上げたところ、その方はその土地の購入を中止されてしまいました… 

<設計の仕事も消えました… (涙)> でも、喜んでいただいたので、あれでよかったのだと思います。)

 

土地は、高い買い物なので、購入前にはできるだけのことを調べて置かれるのが良いですね。 (Aさんの調査はご立派です!)

 

但し、仮に土地の条件が悪くとも、それで全てが決まるわけでもありません。

その土地の場所を気に入っておられるならば、諸条件は建築で何とかなる場合が多いものです。 (但し、そのためのコストは余分にかかることでしょうが。)

その土地の色んな条件を知って、それで納得してやはりそこが好きだからと購入されるのと、何も知らずに買ってから気付くのとでは、満足度や予算組みに大きな差が出てしまうことと思いますから、事前の調査は大切ですね。

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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