家づくり記録 Aさん 「安全で住み心地の良い家が欲しい」

NO.1 「自己紹介、阪神淡路大震災そして家づくりへの序想

2004.04.20

 

   私、Aと申します。  これから私の家づくりの記録を久米さんのご好意で連載させていただきます。

  何分、自分の記録ですので参考になるかどうか分かりませんが、読んでいただければ光栄です。

  まず、簡単に自己紹介をさせていただきますと、男性、年齢60歳(この春、会社を定年退職)、西宮市内に在住、家族は妻と子供2人の4人+犬一匹です。

 

  現在、私が住んでいる家は、築後35年で土地約39坪、延べ床面積約33坪の木造二階建(総二階)です。日本の都市部の一戸建てとしては平均的な規模でしょうか。 一階はリビング・ダイニング、キッチン、玄関、書斎、浴室、洗面、便所で、二階は主寝室、子供部屋二つと納戸です。この内二階の奥の二間は後で増築しました。   さて、50歳を過ぎたあたりから「このまま死ぬまでこの家に住み続けるのか」という疑問が大きくなってきました。そんな時、1995年1月17日の阪神淡路大震災で我が家は半壊のダメージを受けました。 外壁、内壁にクラックが入り、特に一階の大きな開口部の窓まわりや建具が変形して窓や雨戸が開かなくなりました。しかし、それ以上に基礎や土台まわりが心配で床下にもぐってみましたが大きな異常は見られずホッとしました。新耐震基準(1981年)以前の建物だったのですが筋交いや壁の配置が適切だったのでしょう。主要構造部は大きな損害を受けずにすみました。結局、外装の補修、内装、浴室・便所のタイルの修繕に止まりました。  しかし今、築後35年を経過して部分的にかなり老朽化が進んでいます。再度、阪神淡路大震災クラスの大地震に見まわれても倒壊しないことはもちろん、大きな損傷を受けずに済むのだろうか心配です。 私にとって阪神淡路大震災の教訓は家の構造強度の重要性です。特に基礎をがっちり作る事や柱、梁、壁の強度と配置が重要だと思います。私の町内では、倒壊した家の下敷きになって30人以上の方が亡くなりました。つぶれた家の前で「この中に人がいます。助けてください」と叫んでいる人を見ましたが、私はどうすることも出来ませんでした。 これから家を建てようとする方は、地震や台風、火事などの防災上の構造にかける予算は惜しまない方がよいと思います。デザインや見た目の綺麗さも大事ですが、災害に強い性能が優先するということです。 

 

  その他、今の家に対する不満をあえてあげれば、

 1. ともかく夏暑く冬寒いこと。これは断熱性能が低いこと(断熱材の厚みやガラス、サッシの断熱性など)と気密性が悪く隙間風が入ってくることが原因です。35年前の仕様としてはこれが当たり前だったでしょうが、特に冬、暖房しているリビング・ダイニングから便所・浴室・洗面へ入ったときの寒さはこたえます。コールドショックの危険もあります。

 

2.日当たりが悪いこと。南側隣地いっぱいに二階建てが立っているため、特に一階では冬季は一日中、陽が差し込みません。都市部では住宅密度が高いため、これは贅沢な不満ですが。

 

3.二階にはもともと廊下が無く、後で二間増築したため部屋が部屋への動線となってしまっていることです。娘などは寝ている私の足元をまたいで歩いている始末です。

 

 4.一階に家内の作業する場所が無いこと。炊事・洗濯などで中断してもそのまま裁縫などの作業を広げておけるスペースがありません。

 

5.高齢者配慮(バリアフリー)仕様になっていないこと。地方に住む母は6年前から車椅子生活をしています。今の我が家では母は暮らせません。

 

6.二階にも便所が欲しいこと。4人も家にいると便所が込み合うこともあります。また、水洗が故障したりすると大変です。 

 

7.常に床下の土が湿っている(布基礎)。このため土台や根太などの劣化やシロアリの被害も心配です。 

 

    (誠に贅沢な不満ばかりです。発展途上国の人たちに比べれば、我々日本人の大半は実に豊かな暮らしを享受しています。しかし、古今東西、人間の欲望には際限がないと言いまして私も凡人ですので「もっと安全で住み心地のよい家が欲しい」と念願するのです。) 

 

 

 上記の問題を解消するために、具体的にどうするのか。方策としては3つ考えられると思いました。 

1. 今の家をリフォームする。

  この方法では建物の主要構造の配置は変更できないし、床面積も増やせません。又、断熱材を入れ替えたり、窓まわりをやりかえるとなると大工事となります。 結局、すべての不満を解決するのは難しいようです。

 

2.今の土地に建て替えする。 

 今の土地の条件(面積、用途地域と各規制など)が決まっていますから、今の家より大きな家は望めません。それに今は周囲に三階建ての家やマンションはありませんが、将来できないという保証は何もありません。南側に三階建てが建つと二階も日当たりが悪くなります。それでは我が家も三階建てに建て替えればと思いますが、老後のことを考えると階段の上り下りが大変です。それと引越しが2回になります。

 

3.新しい土地を取得して新築する。

 費用は一番かかりますが計画や要望をすべて盛り込むことができます。そのためには取得する土地の条件(場所、道路や隣地との関係、形状、面積、用途地域と規制)を良く考慮する必要があります(そんないい土地が簡単に見つかるはずもないが、こればかりはやってみないとわからない)。それに引越しが1回で済みます。

 

 

   いろいろと家族で相談した結果、予算の目処がつけば「3の新土地に新築」で行こうと方針を決めました。しかし、拙速で家を建ててはいい家はできないだろうと思いました。一生に一度の大きな買いものだし、「こういう家を」と自分で納得できるものを持ちたい。それでは納得できる家とはどんな家なのか。予備知識も経験も何もない。何から手をつけたらよいのか、会社の定年まであと数年あるし仕事も忙しい。資金計画もこれから、何もかもすべてこれから・・・。この段階(今から4年前)では全くどうしてよいか分からない暗中模索の状態でした。                                       

 

久米から一言… 


Aさんの家は4月に着工したばかりです。 どんな家造り記録になるか、どきどきです… 

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

 (記事はこちら)

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

 (記事はこちら)