Y子さんのお住まい リフォーム記録

●家づくり日記(1)久米さんに出会うまで

 

 まずは自己紹介から

 

 今回久米様にお願いして家を改修することになりましたY子です。

 主人と2人の未就学の子供の4人家族。

 70㎡程の賃貸マンションに住んでいます。

 3年前くらいから自分の家を持ちたいと漠然と思っていたものの不動産会社に物件をみてももう一つパッとしないし、何度か物件を紹介してもらい購入するチャンスはあったのですが即決断するという気持ちまでに至りませんでした。


 そうしているうちに一人暮らしをしていた実家の母が骨折で1か月入院することになります。

 共働きの私たちにとって子供たちを幼稚園に通わせ、仕事、家事に追われることにプラス母の介護となるととても忙しい日々が続きました。実家、病院、私の職場が車で20分の距離ですがとても遠く感じました。幸い母のリハビリも順調に進みまた一人暮らしが可能になってきた母ですがけがをしてしまったことにショックをうけしばらくの間は暗く、とても心配になっている私を見て主人が同居を勧めてくれました。

 実家は築40年の重量鉄骨3階建てです。

 はたしてそこに住むことができるのか、もしかしたら建て替えが必要なんじゃないか、

そうしたときは誰に相談したら的確な判断をしてもらえるのか、私たちは全くわからずにいました。ハウスメーカーに聞けば建て替えを勧められるし、リフォーム専門にされているところではリフォームを、不動産屋さんに聞けばほかの物件を勧められるに決まっている。それに身近な人に聞くだけではなかなかいい判断ができないと思い切って中立な意見を言ってもらうため一級建築士の方に相談することを決意しました。

まずは実家のある西宮に住まわれている建築士さんをネットで検索、素敵な作品を作られている方を何人か探し、事務所を見に行きました。実際どんなところでお仕事をされているかを見てみたかったのです。

 そこで初めに行ったのか久米先生でした。

 

 事務所の前でお電話をかけてみたところお電話に出られませんでした。ご縁がなかったのだと諦めほか2件を回って帰りました。

 でも、私はなんだか諦められず自宅に帰ってからもう一度お電話をしてみることにしました。

 そうしたら電話がつながったのです。

「もしかして先ほど電話された方ですか?」

そう言っていただけたその気遣いのある一言でほぼ私の気持ちは固まったと思います。

そして後ろで子供たちが大声で遊んでいる中で相談させてもらいました。1時間くらい話したでしょうか久米先生の返答はどの質問に対しても的確で今まで何年も迷っていたことが一掃されました。

 まずは実家を構造の方と見に来ていただけることになりました。

 ちょうどこの電話がつながったのは久米様が長期休暇に入られる前日の午後7時。ギリギリセーフ。

 これがご縁なのだと感じた日でした。


(第2回へ続く)


久米からひと言…


築年数のある程度経過した建物を、改修して使い続けるか、解体して新築するか、は誰しもが悩まれるところです。

初めにY子さんに申し上げたのは、(どなたにも同じことは言いますが)

どれだけ改修に費用をかけたとしても、構造の基準を現在の基準まで引き上げることはできない、それをまずご承知おきいただきたいということでした。

木造の建築物ならば、ある程度費用をかければ、現在の建築基準法の基準まで補強することはできますが(それでも改修工事の限界を考えれば、9割くらいまでだと思います。)、木造以外の建物は、手を入れられる範囲も限定され、もし補強したとしても、基礎は手つかずとなるケースが殆どです。


現場を拝見したところ、阪神大震災を経験した建物ですが、しっかりと建っていました。

鉄骨の建物はもともと揺れによって建物が壊れないようにする構造であるので、地震で外壁が壊れるのは当然であり(木造と違い、外壁が壊れても建物の強度には影響ありません。)もし、構造が破たんしたところがあるとすれば、すでに建っていられないはずなので、おそらくこのまま改修して使っても問題はないだろうと判断しました。


解体後、みてみると、やはり構造はどこも痛んでいませんでした。また、現行基準にはあわないとはいえ、私たちが思っていたよりもしっかりした部材を使って建てられており、改修をY子さんが決断されたのは正解だったと今も、思っています。構造の補強は下手にせず、このまま内部だけ改修となったので、新築の同様の規模のものと比較すれば、大きなコストダウンになるでしょう。

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

 (記事はこちら)

 GeekanNZ のウエブサイトはこちら

 

- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

 (記事はこちら)