Tさんのお住まいリフォーム記録

1.マンション購入

   
 アメリカに11年ほど住んでいたので、帰国後の社宅(約65平米)が窮屈すぎ100平米以上のマンションを探しはじめたのが、去年の6月でした。
 ちょうど芦屋近辺に友人がマンションを購入、そこでの空き部屋が出たと言う事で最終的にそこに9月頃決めましたが、そこにいたるまでは西宮、芦屋かいわいでの新築、中古、一戸建て、マンションと延べにして約60件の物件をあたりました。そこに決めた理由は、予算の上限のなかで・広さ・立地環境・管理体制がぴたっとあったからでした。
   
2.リフォーム

   
 買ったマンションは、114平米の3LDK, 築12年と言うことで全面的にリフォームするには新しかったので、寝室2部屋および風呂を天井、壁、床材の張り替えなどを除き基本的にそのままにして、それ以外をスケルトンにして仕切り直したいと思ってました。
    
 久米さんを知ったのは、あるリフォームの雑誌です。
 その前に何社か当たりましたが、当たって行くうちに自分達のこだわりのようなものが最初は漠然としていたけれど、だんだんリフォームに反映させたくなり、建築家にお願いするのがいいのだろうと思いはじめたところでした。
 特に、自分と女房とは指向性も若干異なり、それらをうまく融合して実際のデザインに落としてくれる人が必要なのだろうと思い、お願いすることにしました。自分は、どちらかと言えばエレガント、クラッシック指向、素材も天然なものにこだわるが、バランス感覚には欠けるとこあり、一方で女房はモダン指向、素材は自分ほどはこだわらないが、色とかデザインにはこだわり、自分よりバランス感覚があるといったところでした。久米さんはしんぼう強く我々二人のチグハグな意見をまとめてくださり、最終的に二人ともが納得できる提案を何度も出してくれました。
 雑誌に打ち合わせは納得できるまで何度でも、と書かれてましたが、まさにその通りでした。

 最終的にリフォームの工事が始まったのが今年の一月末ですから、約4か月ほどデザインの修正、および見積もりにかけて頂いた事になります。その間我々も、壁材、フローリング、カーペット、キッチン、トイレ、等など神戸の三田から、大阪、和歌山まで、東西を奔走しました。

 非常にありがたかったと思うことは、設計料が材料費に比例せずに、定額であったために、設計料を気にすること無く自由に素材を選べたことです。中古のマンションだからといって、決して安っぽいものだけは避けたいと思っておりました。

 マンションが古かった為に、フローリングをするには二重床にする必要があり、天井の高さを望む我々としては大半のカーペットを堀田カーペットの南アの無着色焦げ茶色のウールカーペットにしましたが、ヨーロッパのホテルのようにシックな感じで、カーペットもいいものです。天井および壁材の薩摩中霧島ライト、カールヌーヴォー、自分の6畳の音楽室だけはオスモの無垢フローリング(ブラックチェリー)などなど、素材に関しては大満足です。設計料が(工事費に対して)定率であったならば、こうはいかなかったのではと思います。

 一月末より工事に入りましたが、当初予定の3月中旬よりも遅れてしまい、最終的に引っ越しをしたのは3月30日でしたが、その時点でも工事は終わりきってなく、引っ越しが終わってからも追加修正などの工事が行われました。
 今日は5月3日ですが、最終的に終わりきったのはつい先々週くらいです。

 久米さんより、K社という地元の工務店を紹介されました。皆さん気持ちの良い方々でしたが、我々のリクエストが通常扱っておられる工事よりもはるかにこだわって細かいものであった為に、塗装、タイル、ドアの立て付けなど何度も何度もやり直しとなる部分もあり、工期がずれ込んでしまいました。

 もとあった和室を取り崩して音楽室に、キッチンをオープンにしアイランドを設置しましたが、音楽室の壁がガラスなので合計約30畳の広々としたリビング空間が出来上がりました。途中移設するトイレの床の部分がパイプの関係で上がるなど、想像外のこともありましたが、ほとんどの部分が図面通りでできあがり、元の間取り → スケルトン → 図面 → 新しい間取り、というものが目の前でどんどん変化して行くのは驚きと感動の連続でした。

 今ここに全てのリフォームが終わって部屋を見渡すにあたり、感慨ひとしおです。家を探しはじめてから約一年、我々にしても家づくりに没頭した一年でしたが、久米さん、工務店の方々の御協力なかりせば、これほどの満足感は決して得れてないだろうとつくづく思います。リフォームは奥深く、今から思えば建て売りのマンションや一戸建てにしなくて良かったと思います。今後個人のライフスタイル文化が広がって行くなかで、ますますリフォーム文化が根付くのではないかと思います。

 

(竣工写真はこちら)

 

久米から一言…


工務店は、私のご紹介ともう一社とで合見積もりをとって決まりました。

しかし、わたしがご紹介したとはいえ、つきあいのある工務店は皆忙しかったため、その工務店は、私もほかの設計事務所から紹介してもらった工務店で、一緒に仕事をするのは初めてでした。

そのためか、私の事務所の設計監理のやりかた(といってもごく、普通のものなのですが)を当初は飲み込んでもらえずに、結果的にTさんにご迷惑がかかった部分もあったと申し訳なく思っています。

工期がずれ込んだのは、Tさんのご要望が細かいなどということではなく、(私の監理のほうが細かいでしょう)今回は、現場からの連絡手順がおろそかだったためや、段取りのせいだと、私は受け止めています。

 

それにしても、Tさんは本当に精力的に素材の情報を集めて提供してくださり、私も大助かりでした。ご満足なリフォームとなったのは、なんと言ってもご自身のご努力の成果と思います。

室内の仕上材はほんとに素晴らしいものばかりですが、特にカーペットは最高のものです。染色せずにもともと色のついているもので、そのふかふかとした密度の高い感触は大変に心地よいものです。ウールカーペットはホルムアルデヒド等の吸着作用もあり、湿度調整機能もあって、フローリング等一辺倒の雰囲気の中、また見直されるべき床材だと思います。


Tさん、ご感想をいただき、本当にありがとうございました。

 

 

- GekkanNZ 誌 2018年7月号より
  「建築探訪」連載中です。

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- 一般社団法人海外建設協会(OCAJI)

  会報誌 海外生活だより に寄稿させ

  ていただきました。

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