はじめまして、兵庫県明石市のMと申します。
今回、築24年の典型的な3LDKのマンションを建築設計工場西宮事務所の久米さんにリフォームして頂きました。リフォームをしようと行動を始めたのが、2006年の10月。工事が終わり、引渡しを受けたのが2007年の4月。2007年の5月に結婚式を控えていたので、丁度良いタイミングで完成しました。
1.なぜリフォームをするに至ったか?
それは、結婚して新しい生活を始めるために。
私と妻は共に明石で育ち、幼い頃から慣れ親しんでいるこの町に是非住みたいと強く希望していました。新しいマンションを購入することを検討しても良かったのかもしれませんが、ここは私が幼い頃から住んでいる思い出の家。そして、東側の窓からは明石海峡大橋を望めるというまさに風光明媚な場所、閑静な住宅街です。極近くに、スーパーや銀行など生活する上で必要な環境が全て揃っています。こんなに恵まれた環境から知らない土地へ行くことは考えられませんでした。
2.リフォームをするにあたって
リフォームをしてここに住もう!と決めるまではスムーズに流れました。しかし、リフォームってどうすれば良いのだろう?という疑問は簡単には拭えませんでした。何せ、二人とも全く何も知らない状態でしたから。
私は、手始めにリフォーム専門雑誌を数冊買い込むことにしました。雑誌とは便利なもので、何例ものリフォーム住宅が載っています。メーカー別に比較もでき、自分の好みに合った業者を見つけられるという大きなメリットがありました。
新しい生活を始める大切な場所をどうするのか、週末に彼女(後に妻)と検討することにしました。私は、雑誌を見てすでに3社ほど心に決めていた業者があったのですが、一存では決められないことなので先ずは何も言わずに雑誌を見せ、「君の気に入ったデザインをおしえて」と訊いてみることにしました。
余談ですが、私と彼女はとても感覚の似たところがあります。例えば、街中を闊歩しているときに同じものを同時に見ていて同じ反応をしていることが幾度となくありました。今回の業者選びには果たしてどういう結果が出るのか、密かに楽しみにしていました。雑誌を一通り見終えた彼女が「ここのがいいわ。」と示したページがありました。それは某リフォーム雑誌の表紙を飾っていた、久米さんが設計されたあるマンションのリフォームでした。
久米さん以外にも2社気になるリフォーム業者があったため、3者にそれぞれ図面を設計してもらおうということになりました。
3.リフォームを依頼する
いよいよ、本格的にリフォームの間取りや自分たちの希望を話し、設計していただこうという段階に入りました。
しかし経験のないことは慣れないことばかりで、打ち合わせ段階でもなかなか思うように自分たちの希望を話すことができませんでした。
ただ、一つだけ譲れない条件がありました。
それは、「ワンルーム化」です。
とにかく広さを強調する。東側には大きな窓があります。しかし、部屋を細かく仕切ってあるために、採光が十分ではありませんでした。光が差し込むのは唯一この窓からなので、この窓を効率よく使わない手はないと考えました。部屋の仕切りを取っ払ってしまえばその夢が実現するのではないだろうか、と。
その他には、換気の効率化を目指しました。北西方向にある納戸状態になっていた部屋の壁一面にカビが発生していました。これは、通気・換気が悪いために起こっていた現象です。
二度、三度と打ち合わせを重ねていく内に、自分たちがどんな家に住みたいのかということがすこしずつ描けるようになっていきました。当初望んでいた上記の2条件の他に、和室がある、ウォークインクローゼットがあるといいなぁ、という希望が出てきました。
3者ともそれぞれの個性が出ていて、本当にどのプランも採用したかったのですが、2人で熟考した結果、久米さんに依頼すると決定しました。決定要素は、「私たちの感性に最も近いものをお持ちだと感じたから。」 おこがましいですが・・・
4.久米さんとの打ち合わせが始まる
大まかな図面はすでに作成していただいていたので、これからはどのように肉付けしていくのかが、課題となりました。
打ち合わせの中で、どんな設備が欲しいのか、収納や造作家具についてどうするかという細かい話が進んでいきました。
実は、キッチン・お風呂・洗面台の大きな設備は打ち合わせが始まった時点でほぼ決定していました。
キッチンは、結婚すると決める前にたまたまショールームで見たキッチンに2人とも惚れこんでしまい、いつかはこのキッチンを!と夢のようなことを考えていました。
お風呂は分譲マンション特有の狭くて暗いユニットバスだったため、広くて明るい、そして2人で入ってもまったりできることが条件でした。
洗面台は生活感が如実に表れる場所であることから、鏡は壁一面を覆える大きなものでスッキリと見せたいと考えていました。
その他、リビングルームに造りつけの広くて長い机が欲しいと考えていました。夫婦2人並んでそれぞれの趣味や勉強ができるスペースがあると楽しいのではないかと夢を膨らませていました。
打ち合わせの中心は床材・収納・アイランド・照明器具でした。当初、床材にはフローリングを求めていましたが、下地に何層か必要と判明、そうすることによっって天井が低くなってしまうために断念しました。代わりにコルクを使用することに決定しました。久米さんの自宅兼事務所の床材もコルクでした。このことも決め手となりました。
収納スペースをどうするか→造作
キッチンの収納・テープル及び調理台(アイランド)→造作+通販家具
と決まり、一部照明器具の選定を残して工事を始めることになりました。
5.工事開始
私たちは、久米さんにとって最西の客となったため当初、業者の選定に苦心されたようでした。残念ながら私たちの知る業者はなく、久米さんに探していただくことになりました。ここでも何社か候補がありましたが、ご縁があってなんと、なんと、大阪のそれも泉州の業者さんに来ていただけることになりました。久米さんが起こしてくださった図面に興味を持ってくださり、遠路はるばる明石まで行こうと仰ってくださった結果で、本当にありがたいと感じたものです。
工事が始まってからは、毎土曜日現場に顔を出していました。一週間経つと少しずつ現場の表情が変わっていくのを感じられ、嬉しく思っていました。完成が待ち遠しいと思ったものです。
工事期間中私は、部屋を借りて一人で住んでいました。2,3月の寒い季節に寒い部屋でたくさんの荷物に囲まれて生活していたため、早く出来上がらないか、そればかり考えていました。出来上がったら、彼女といっしょに住むぞ!と思いながら。
工事が始まってからは、壁の材質や造作家具の色、襖紙やドアの金具、照明などあらゆる部分を決定していくことになりました。
和室、ワンルーム、ウォークインクローゼット、トイレ、洗面所の壁にいたるまで、全て直感で決めましたが、出来上がりを見てとても満足しています。
特に、和室の薩摩中霧島壁、ワンルームや洗濯スペースに施されたカルヌーヴォは調湿を考えた素材であり当初懸念していた調湿性を確保できました。妻は、トイレの壁紙がとても気に入り、「私ってセンスいいわぁ。」とトイレに入るたびに自画自賛しています。
ここで、一つ困ったことが発生しました。当初、造作アイランド上の照明は既製品を利用する予定でしたが、デザイン的に部屋のコンセプトと合う物が見つからず、急遽久米さんに造作の提案を頂くことになりました。
一体どんなものが出来上がるのだろうとワクワクしていたところ、部屋のイメージにぴったりな素晴らしいものが出来上がってきました。作成してくださった大工さん曰く、「これを中心にトレンディドラマが撮影できますよ~」と自慢げ。ト、トレンディドラマって・・・
漏水や天井ひび等古いマンションならではのトラブルもありましたが、施工業者の方々にも頑張っていただき無事に竣工を迎えることができました。
6.完成して感じること
キッチンのタイルや照明、梁に沿った棚、長机、アイランドと個性的なパーツが多数盛り込まれているにも関わらず、全体の統一感がありバランスが非常に良いものができあがりました。
当初の希望通り、ワンルームにしたことで採光性能は抜群に上がり、晴れの日には太陽が眩しいくらいに差し込んでくるようになりました。一面の窓には、ウッドブラインドを下げることで、部屋との調和が取れスッキリ感を出すことができました。
また、24時間換気できる装置を配備しこちらもクリアしました。風の通り道を確保することで、カビカビだった部屋も常に綺麗な状態を保てるようになりました。
以前に比べて、生活の動線が格段に良くなり無駄な動きが少なくなったように感じられます。
部屋の中には決して色が溢れることなく、少なく基本的な色数でシンプルにまとまっています。木の茶色、壁の白、を基調としてベッドやソファを配置しました。仕事から疲れて帰ってきても、家で英気を養うことができます。早く家に帰ってきたい、休みの日には家でまったりしたいと思わせてくれる、ホッとできる空間ができあがりました。
天井のくし鏝仕上げのカルヌーヴォは、照明を点けると表情豊かな陰影が良い雰囲気を提供してくれます。
妻は、なぜかこの部屋を”ニューヨークスタイル”と呼び、トイレの壁紙以上に気に入っている様子です。
机や収納、設備全般に渡る好き勝手なリクエストにもかかわらず、それらを巧みにまとめ、調和のとれた空間を造っていただきました。
久米から一言…
文中からもお分かりのように、本当にとても仲の良いお2人です。(羨ましい限り…)
Mさんの場合は、初めに提案させてもらったプラン通りに、間取りの変更はなく進みました。
ワンルーム感を損ないたくなかったため、ご希望の和室はよくある、LDK隣接の配置ではなく、玄関から直接入る部屋(昔風に言うと、踏みこみのような寄付きのような)としました。
玄関から奥へ進むのに必ず和室を通って行くかたちです。
ですからここの和室は通路のようですが、襖を閉めると独立してちょっとした客間にもなるし、何より、家に戻って、まず畳を踏んで部屋に入るというのは、想像以上に気持ちが落ち着くもので、設計した者としては、この和室の配置をとても気に入っております。
また、奥様のご提案でウォークインクローゼットにも畳を敷いたのですが、このアイデアは、私も良いなぁと思いました。
畳はイグサの働きで調湿効果や消臭効果もあるし、何より、本畳(ちゃんとしたワラ床の昔からの畳)の硬すぎず柔らかすぎない、あの踏み心地は、日本の文化は良いなぁとしみじみ感じられるものですね。
Mさま、これからも末永くお住まいを楽しんで、どうぞお幸せに…!
有難うございました。
その後のコメント) 現在(2011年)、Mさんは土地を新たに購入され、新築の計画をスタートされました。マンションの改修に引き続き、また新築のご依頼をいただけるとは、わたしにとってこれ以上の幸せはありません。 新しいお住まいもすぐ近い場所。
いまはまだお子様が小さいので、これからゆっくり時間をかけて設計を進めていくところです。楽しみです。